会長からのご挨拶

会長

 『働き方改革は「社労士」なくして実現しない』

 少子高齢化による労働力人口の減少、働き方改革の推進、AI・IoTによって加速する第4次産業革命が進む中、日本における労働・雇用の現場は、今まさに転換期を迎えているといえます。つまり、労働・社会保険諸法令のスペシャリストであり、労務管理分野の専門コンサルタントである社会保険労務士(以下「社労士」という。)が社会に、そして国民に今求められているのです。
 ご存知の通り、働き方改革関連法令が2019年4月から順次施行されています。深く関与する我々社労士にとっても大きな転換期になることは間違いありません。

 この「働き方改革」の目指すところは、「働く人々がそれぞれに事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する」ことであり、「人を大切にする企業づくり」を後押しすることこそ、我々社労士に与えられた責任と役割であると考えるわけです。私は、このことが「未来を見据えた社労士事業の発展的な推進」に繋がるものであると確信しています。全国社会保険労務士会連合会においても「人を大切にする企業づくりを支援」し、「人を大切にする社会の実現」をコンセプトとしているのです。

(1)社労士と労務管理
 当然のことながら、社労士は「未然防止」の観点から、「就業規則の整備(労働時間管理を含む)」や「人事制度・評価制度」といったものを企画・立案し、それを規定化しています。そして、企画・立案したものには、社労士としての責任とプライドを持って対処しなくてはなりません。
 例えば「労働基準監督署から指摘を受けたり、従業員から意見を求められた」ような場合には、社労士自ら事業主と一緒に所轄労働基準監督署に出向き見解を述べたり、従業員の意見や質問等に対してその趣旨を説明するなど、積極的に責任をもって対応する必要があるわけです。

(2)トラブルが発生した場合への対応
 また、このように、いくら社労士が「未然防止」に尽力していても、手の隙間から砂が漏れるように、見解の相違等によってトラブルになってしまうことがあります。
例えば、退職した元従業員から未払い残業代や退職・解雇等について労働基準監督署へ申告があったり、労働局の紛争調整委員会から「あっせん開始通知書」が届いたり、突然ユニオン(合同労組)から団体交渉の申し入れがあったりと、個別的労働紛争や集団的労働紛争が発生することも考えておかなくてはならなりません。
 「働き方改革」を進めていくうえにおいては「長時間労働の是正(労働時間管理等コンプライアンス)」、「同一労働・同一賃金」、「生産性の向上」といった永遠のテーマがあります。このテーマを追求していく過程においては、いくら我々社労士が未然防止に努めたとしても、そこには見解の相違における労使間でのトラブル、いわゆる「個別的労働紛争」が生じてしまうことがあるのです。
 例えば、この「個別的労働紛争」がこじれた場合には、最終的に「訴訟」に発展するケースも考えられますが、その場合我々社労士は「補佐人として弁護士である訴訟代理人と共に裁判所へ出頭して陳述することができます(社労士法第2条の2の業務:出廷陳述権)し、また東京会が運営している社労士会労働紛争解決センター東京や労働局の紛争調整委員会に持ち込まれたような場合には、特定社労士としてあっせん代理ができます(社労士法第2条第2項の業務:あっせん代理業務)。また、その一方で、「個別的労働紛争」が解決せずにユニオン(合同労組)に持ち込まれるようなケースもありますが、この場合には、「集団的労使紛争」として団体交渉の場に立ち会い、他人の権利義務や法的事項等に介入しない限りにおいて、必要な説明等、企業のサポートを行うことになるわけです(社労士法第2条第1項第3号業務:労務管理の業務)。
 
(3)労務管理の重要性
 労務管理は、マニュアルでは対応できないと思っています。企業にはそれぞれ個性があるからです。特に中小・小規模事業者であれば、例えば「ワンマン社長」であったり、「就業規則が実態と合っていない」、「労働組合の有無」、「人事部や総務部の成熟度」などによっても、我々社労士のアドバイスの仕方は当然、異なってくるわけです。

 それぞれの企業の実情に応じた的確なアドバイスができるのは、事例を積み重ね、実務に精通している社労士しかいないと思っています。そして、事例を積み重ね、実務に精通している社労士だからこそ「働き方改革」を実現することができるわけです


2021年6月吉日
東京都社会保険労務士会

会長